《読書感想文》渡邊恵太 : 融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論 (2015)
はじめに
本記事は営利・販売促進や権利侵害を意図しておりません。もし不利益・不都合が発生する場合は対応致します。お手数ですが @plum_shiga までご連絡願います。
随分前に読みきった本ですが、ちょっと読み返すきっかけがあったので、改めて以下感想文を。
目次
はじめに - 融けてゆく世界
第1章 Macintoshは心理学者が設計している
第2章 インターフェイスとは何か
第3章 情報の身体化 - 透明性から自己帰属感へ
第4章 情報の道具化 - インターネット前提の道具のあり方
第5章 情報の環境化 - インタラクションデザインの基礎
第6章 情報の環境化 - デザインの現象学
第7章 メディア設計からインターフェイスへ
あとがき
キーワード
デザイン、インターフェイス、道具、環境、文脈、自己帰属感、透明性、UX、サクサク感、道具化、環境化、実世界、暗黙性、インタラクション、現象学
どんな本?
以下3点のポイントから紹介できる。
- 最近のHCI潮流の解説書である。
- 概念と実装がつながっている解説書である。
- ちょっとした方向性(あるいはそのきっかけ)を見つけるための解説書である。
1. 最近のHCI潮流の解説書である。
HCIの概念や基本的な解説書・教科書と呼ばれるものは、D.A.Norman の "誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論"や、加藤 隆先生の "認知インターフェイス" が挙げられるが、
本書は特に最近のHCIの潮流を抑えている。例えば4章〜6章は特に文脈や現象という視点から現代的な概念やトピックを具体的に解説している。
2. 概念と実装がつながっている解説書である。
上記でも少し触れたが本書はよくわからない概念を別のよくわからない言葉で言い換える類ではない。
むしろ、筆者の研究に基づく実例(画面のスクリーンショットもある)や、実働するアプリケーションを引き合いにしながら見た目にイメージがつきやすいように議論されている。
3. ちょっとした方向性(あるいはそのきっかけ)を見つけるための解説書である。
新しいサービスや顧客へ新規性のある提案を行う際など、よく方向性が見えないときに「こういう考え方があるよ!」と新しい視点や切り口を与えてくれる。
またその切り口は決して突飛すぎるものではなく、「ユーザのために」という大前提を以って議論された観点である。
誰が対象?
感想
本書を読んでいると、素朴に「ああ、なるほどね」と納得できることが多かった。
近年のUI/UXを取り巻く抽象的な概念や議論は決して簡単な内容ではなく、混乱をきたすことが多い。なぜなら、時間軸や文脈、人物(使い手も作り手も含め)など様々な角度から議論が展開されるためである。
本書では、あくまで読み手自身もひとりのユーザとして難しい概念の理解をサポートしてくれている。また、(私は)あまり本書を読み進めるにあたって、単語や概念を都度ググったりせず、そのまま読み進めることができた点で非常に快適だった。従って、なるべく快適に今の潮流をキャッチアップするのに本書は非常に役立つ印象である。